ノイズの消し方は調べた。音量のそろえ方も分かった。でもいざ収録した音声を前にすると、「で、結局どれを、どの順番でやればいいんだっけ?」と手が止まってしまう——音声配信を続けていると、必ず一度はぶつかる壁です。
実は音声の仕上がりは、一つひとつのテクニックよりも「作業の順番」で大きく変わります。同じ機能を使っても、順番を間違えるだけで、消したはずのノイズが復活したり、声がこもって聞こえたりするのです。
この記事では、収録した音声を配信できる状態に仕上げるまでの流れを、録音ボタンを押す前の準備から、MP3で書き出すところまで一本道でまとめました。毎回の作業を1クリックにする時短ワザも最後に紹介します。
音声の仕上がりは「作業の順番」で決まる
音声編集には「正しい順番」があります。理由はシンプルで、前の工程の結果が、次の工程の効き方を変えてしまうからです。
いちばん分かりやすいのが、ノイズ除去と音量調整の関係です。先に音量を上げてしまうと、ノイズも一緒に大きくなります。しかもノイズの性質そのものが変わってしまうため、あとからノイズ除去をかけても、きれいに取り切れません。逆に、ノイズを消してから音量を上げれば、澄んだ音のまま大きくできます。
収録から配信までの全体像(所要時間つき)
まずは全体の地図を頭に入れておきましょう。10分程度の音声であれば、慣れれば編集全体で10分ほどで終わります。
| ステップ | やること | 目安時間 | 詳しい解説 |
|---|---|---|---|
| 準備 | マイクの確認・冒頭の無音づくり | 30秒 | この記事で解説 |
| STEP 1 | 録音する | 収録時間による | 録音→MP3の最短手順 |
| STEP 2 | いらない部分をカットする | 3〜5分 | この記事で解説 |
| STEP 3 | ノイズを取り除く | 1分 | ノイズ除去の手順 |
| STEP 4 | 音量を整える(3段階) | 1分 | 音量をそろえる方法 |
| STEP 5 | BGMを重ねる(任意) | 3分 | 複数トラックの編集 |
| STEP 6 | MP3で書き出す | 1分 | この記事で解説 |
なお、この記事はAudacityがすでに使える状態であることを前提にしています。まだインストールしていない方は、先にAudacityのインストール・日本語化・初期設定を済ませてください。本記事はバージョン3.7系の画面をもとに解説しています(2026年8月時点の最新版は3.7.8です)。
【準備編】録音ボタンを押す前の3つの習慣
編集を早く終わらせるコツは、実は編集を始める前にあります。この3つを習慣にするだけで、あとの作業が驚くほどラクになります。
① マイクが正しく選ばれているか確認する
Audacityの画面上部にあるマイク欄が、実際に使うマイクになっているか確認します。パソコンにイヤホンやWebカメラをつないだ日は、勝手に別のマイクへ切り替わっていることがよくあります。マイクに向かって声を出し、メーターが動けばOKです。
番外:録音の音質を上げたい人へ(おすすめのUSBマイク)
パソコン内蔵マイクでも録音はできますが、こもった音になりがちです。数千円のUSBマイクに変えるだけで聞き取りやすさがはっきり変わります。価格帯別に3つ紹介します。
| タイプ | 商品 | 価格帯 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| お試し・エントリー | MillSO ピンマイク(USB直挿し) | 1,700円前後 | まず配信・録音を試したい人向けの小型マイク |
| 定番人気 | MAONO PD100X(USB/XLR両対応) | 7,000円前後 | レビュー2,000件超のポッドキャスト向けダイナミックマイク |
| 本格派 | オーディオテクニカ AT2020USB-X | 2万円前後 | 配信・宅録の定番コンデンサーマイク |
② 録音を始めたら、まず2秒だけ黙る
これがこの記事でいちばんお伝えしたい習慣です。録音ボタンを押したら、すぐ話し始めずに2秒ほど黙ってください。
Audacityのノイズ除去は、「あなたの部屋のノイズがどんな音か」を先に学習させてから使う仕組みになっています。その学習のためには、声が入っていない、ノイズだけの部分が必要なのです。この2秒があるかないかで、ノイズ除去の精度がまるで変わります。
③ 声だけの収録なら「モノラル」で録る
ひとりでしゃべるだけの配信なら、左右に音を振り分ける必要はありません。モノラルで録っておくとファイルサイズが約半分になり、アップロードも速くなります。すでにステレオで録ってしまった場合は、ステレオをモノラルに変換する方法であとから変換できます。
【カット編】STEP 2:いらない部分を削る
録音が終わったら、まずは不要な部分を削ります。ここを先にやるのが大事です。あとの工程で使う効果は音声全体にかかるため、消す予定の部分にまで処理をかけるのは時間のムダになります。
- 言い間違えて言い直した部分
- 長すぎる沈黙、「えーっと」が続いている部分
- 咳ばらい、水を飲む音、宅配便のチャイム
- 本題に入るまでの長い前置き
削り方は簡単で、波形の上で消したい範囲をドラッグして選び、キーボードのDeleteキーを押すだけです。間違えて消してもCtrl+Zで何度でも元に戻せるので、思い切って削って大丈夫です。
【仕上げ編】STEP 3〜4:ノイズを消してから音量を整える
STEP 3:ノイズを取り除く
ノイズ除去は2段階です。まず冒頭の無音部分だけを選んで「エフェクト」→「ノイズ除去と修復」→「ノイズリダクション」を開き、「ノイズプロファイルを取得」をクリックします(画面がいったん閉じます)。次にCtrl+Aで全体を選び、もう一度同じメニューを開いて「OK」を押します。
設定はノイズ低減量12dB・感度6から試すのがおすすめです。強くかけすぎると声が水中にいるような不自然な音になるので、「ノイズが気にならなくなる最小限」で止めるのがコツです。詳しい手順や設定値の調整はAudacityでノイズを除去する方法で解説しています。
STEP 4:音量を3段階で整える
ノイズが取れたら、音量です。Ctrl+Aで全体を選んでから、「エフェクト」→「音量と圧縮」の中にある3つをこの順番でかけます。
| 順番 | 使うもの | 設定の目安 | 役割 |
|---|---|---|---|
| ① | コンプレッサー | しきい値 -12dB/圧縮比 4:1 | 大声と小声の差を縮めて聞きやすくする |
| ② | ラウドネス正規化 | -16 LUFS | 配信に適した音量に合わせる(最重要) |
| ③ | リミッター | しきい値 -3dB | 笑い声などの急な大音量で音が割れるのを防ぐ |
-16 LUFSという数字は、Apple Podcastsが推奨している音量の基準です。スタエフをはじめ多くの音声配信サービスでも自然に聞こえるので、迷ったらこの値で問題ありません。各設定の意味や調整のコツはAudacityで音量をそろえる方法で詳しく解説しています。
ここまで終わったら、冒頭に残しておいた2秒の無音を削ります。これで音声本体は完成です。
【BGM編】STEP 5:BGMを重ねる(必要な人だけ)
オープニングにBGMを入れたい、という場合はここで作業します。声だけの配信なら、この工程はまるごと飛ばして次に進んで構いません。
大事なのはタイミングです。BGMは必ず、声の仕上げ(ノイズ除去と音量調整)が全部終わってから重ねてください。先にBGMを入れてしまうと、ノイズ除去がBGMまで巻き込んで音を変えてしまいますし、音量調整も「声とBGMを合わせた音」に対してかかるため、狙った音量になりません。
手順は、声のトラックの下にBGM用のトラックを追加して音楽ファイルを読み込み、BGM側の音量だけを下げてバランスを取る、という流れになります。具体的な操作はAudacityで複数トラックを編集する方法で図解しています。
【書き出し編】STEP 6:MP3で保存する
Audacityでは「保存」ではなく「書き出し(エクスポート)」を使います。「ファイル」→「オーディオをエクスポート」→「コンピュータにエクスポート」から、形式にMP3を選んで保存してください。
| 用途 | 形式 | ビットレート | チャンネル |
|---|---|---|---|
| 音声配信(スタエフ・ポッドキャスト) | MP3 | 128kbps | モノラル |
| BGMや効果音を重ねた作品 | MP3 | 192kbps | ステレオ |
| AIで文字起こしする音源 | MP3 | 128kbps | モノラル |
| あとで再編集する元データ | WAV | — | 収録時のまま |
声だけの配信なら128kbpsのモノラルで十分です。数字を上げてもファイルが重くなるだけで、聞き手が感じる音質はほとんど変わりません。
毎回の仕上げを1クリックにする「マクロ」機能
ここからが、配信を続ける人にとっていちばん効く時短ワザです。Audacityには一連の作業を記録して、次回から1クリックで再現できる「マクロ」という機能があります。
毎回「コンプレッサー→ラウドネス正規化→リミッター」と3回メニューをたどって設定を入力していた作業が、ボタン1つで終わります。設定値も記録されるので、「前回いくつにしたっけ?」と悩むこともなくなり、配信ごとの音量のブレもなくなります。
- メニューの「ツール」→「マクロ」を開きます。
- 「新規」をクリックし、分かりやすい名前をつけます(例:「配信仕上げ」)。
- 「挿入」をクリックし、一覧から「コンプレッサー」を選んで設定値を入力します。
- 同じように「ラウドネス正規化」「リミッター」を順番に追加します。
- 「保存」してマクロ画面を閉じます。
- 次回からは音声を開いてCtrl+Aで全体を選び、「ツール」→「マクロ」から作ったマクロを選んで実行するだけです。
よくある質問
Q. ノイズ除去より先にカットしてもいいのですか?
A. はい、カットが先で問題ありません。むしろ推奨です。消す予定の部分にまでノイズ除去や音量調整をかけるのは時間のムダになります。ただし冒頭の無音部分だけは、ノイズ除去が終わるまで残しておいてください。
Q. BGMはどのタイミングで入れるのがいいですか?
A. 声の仕上げ(ノイズ除去と音量調整)がすべて終わったあとです。先にBGMを重ねてしまうと、ノイズ除去がBGMまで巻き込んで音を変えてしまいますし、音量調整も声とBGMの合計に対してかかるため、狙った音量になりません。手順はAudacityで複数トラックを編集する方法をご覧ください。
Q. 効果をかけたら音が不自然になってしまいました
A. Ctrl+Zを押せば、何度でも元に戻せます。原因の多くは「かけすぎ」です。ノイズ除去なら低減量を下げる、コンプレッサーなら圧縮比を下げる、というように数値を弱める方向で調整してみてください。効果をかける前に「プレビュー」ボタンで確認する習慣をつけると失敗が減ります。
Q. もっと音を良くしたいのですが、次に何をすればいいですか?
A. まずはマイクを口に近づけることが、どんな編集よりも効果があります。編集で足りない部分を補いたくなったら、Audacityおすすめプラグイン10選でAIノイズ除去などの拡張機能を試してみてください。ただし、まずは基本の流れを毎回同じようにこなせるようになるほうが先です。
Q. Audacityは本当に無料で使い続けられますか?
A. はい。Audacityはオープンソースのソフトで、機能制限も試用期間もなく、すべての機能を無料で使えます。商用利用も可能なので、収益化している配信でも問題ありません。
まとめ
音声配信の仕上げは、覚えることが多いように見えて、実際にやることは「カット → ノイズ除去 → 音量調整 → 書き出し」の4つだけです。この順番さえ守れば、あとは同じ作業の繰り返しになります。
そして繰り返しになるからこそ、マクロ機能が効いてきます。最初に一度だけ設定しておけば、2回目以降の仕上げは1クリック。編集にかける時間が減るほど、話す内容を考える時間が増えます。配信を長く続けるうえで、これがいちばん大きな効果かもしれません。
あわせて読みたい
- Audacityのインストール・日本語化・初期設定【完全ガイド】|まだ導入していない方はこちらから
- Audacityで“録音→MP3書き出し”まで|初心者向け最短手順|まず1本出してみたい方へ
- Audacityでノイズを除去する方法|STEP 3の詳細
- Audacityで音量をそろえる方法|STEP 4の詳細
- Audacityで複数トラックを編集する方法|BGMを重ねたい方へ
- Audacityでステレオをモノラルに変換する方法|ファイルを軽くしたい方へ
- Audacityおすすめプラグイン10選|さらに音質にこだわりたい方へ


コメント