給料が上がったのに、思ったほど嬉しくない。欲しかったものを買ったのに、1週間で当たり前になっている。——そんな経験、ありませんか。
リベシティの読書会で発表する本を探していて手に取ったのが、この『「幸せをお金で買う」5つの授業』でした。原題はHappy Money。心理学者と行動経済学者のふたりが、「お金と幸福」を研究したデータをもとに書いた本です。
本書の答えは、はっきりしています。「幸せはお金で買える。ただし、使い方を知っていれば」。いくら稼ぐかではなく、どう使うか。その具体的な方法が5つにまとめられています。
この記事では、その5つの授業と、読み終わってからわたしが持ち歩くことにした3つの問い、そして正直に感じた物足りなさまで書いていきます。
どんな本? 研究者が書いた「お金の使い方」の本
| 書名 | 新版「幸せをお金で買う」5つの授業 |
| 原題 | Happy Money: The Science of Smarter Spending |
| 著者 | エリザベス・ダン(ブリティッシュコロンビア大学 心理学教授) マイケル・ノートン(ハーバード・ビジネス・スクール 行動経済学教授) |
| 訳 | 古川奈々子 |
| 出版社 | KADOKAWA |
| 発行 | 新版:2026年4月(旧版は2014年2月) |
| ページ数 | 278ページ(旧版は254ページ) |
| 定価 | 1,800円+税(旧版は1,600円+税) |
| ISBN | 978-4-04-811355-7 |
ポイントは著者が学者だということです。「こう使えば幸せになれる気がする」という体験談ではなく、実験と調査データがもとになっています。心理学と行動経済学の研究者コンビ、という組み合わせがそのまま本の性格になっています。
新版が出たばかりです
もともとは2014年に出た本ですが、2026年4月に新版が出ています。ページ数が254から278に増え、判型も少し小さくなりました。これから買うなら新版のほうです。
そして新版の帯には「両@リベ大学長 推薦!」とあります。『本当の自由を手に入れる お金の大学』の著者ですね。リベシティの読書会で名前が挙がる本だったのは、たぶんこれが理由です。「1日でも早く知ってほしい」という推薦文がついています。
本書の答え:「買える。ただし使い方を知っていれば」
「お金で幸せは買えるのか?」という問いに対して、本書はきっぱり「買える」と答えます。ただし条件つきで、“使い方”を知っていれば、と。
裏を返すと、ほとんどの人はその使い方を知らないまま使っているということです。だから収入が増えても幸福度がそれほど上がらない。ここが本書の出発点になっています。
そして提示されるのが、次の5つです。
| 授業 | ひとことで言うと | |
|---|---|---|
| ① | 経験を買う | モノより、思い出に |
| ② | ご褒美にする | たまにするから、特別 |
| ③ | 時間を買う | 嫌な時間を、手放す |
| ④ | 先に支払う | 待つ時間も、ごちそう |
| ⑤ | 他人に使う | 誰かのために、使う |
5つの授業
① 経験を買う|モノは色あせる、経験は思い出になる
モノは買った瞬間がピークです。うれしいのは最初だけで、すぐ「あって当たり前」になります。新しいスマホも、1か月経てばただの道具です。
いっぽう旅行や食事のような経験は、その場で終わりません。思い出として残り、人に語るたびに価値が増えていきます。むしろ、ちょっとした失敗まで含めて面白い話になります。
だから、選ぶときの基準を「何を買うか」から「どんな時間を過ごすか」へずらす。それだけで同じ金額の満足度が変わる、という話です。
わたしの実感で言うと、家族で行ったゴッホ展は、いまだに話のネタになっています。同じ金額でガジェットを買っていたら、こうはならなかったと思います。
② ご褒美にする|いつもの贅沢は、ただの日常になる
これがいちばん耳が痛かったです。どんなご馳走でも、毎日続けると「普通」に薄れていきます。
逆に言うと、あえて頻度を減らすと、一回あたりの幸せが濃くなります。大好きなものほど、間隔をあけて味わったほうが得だということです。
これは節約とは動機がまったく違います。我慢するためではなく、おいしく味わうために減らす。同じ「買わない」でも、気持ちがぜんぜん違ってきます。
③ 時間を買う|嫌な時間を手放し、好きな時間を買う
苦手な家事や、長い移動時間。これらはお金で手放してよい、というのが本書の立場です。食洗機を買う、掃除を頼む、少し高くても速い交通手段を選ぶ。
大事なのはその先で、浮いた時間を、好きなことや大切な人にあてること。手放しただけで別の雑用に埋めてしまうと、意味がありません。
逆の注意もあります。「安いから」で時間を奪われる買い物には気をつけろ、と。安い物件を選んだせいで通勤が1時間増える、というような話です。値段だけ見ていると、いちばん取り返しのつかない資源を失います。
時間そのものについては、『限りある時間の使い方』のほうが深く掘っています。あわせて読むと効きます。
④ 先に支払う|待つ時間こそ、いちばんのごちそう
これがいちばん意外で、いちばん面白かった授業です。
先に払っておくと、待っているあいだのワクワクが手に入ります。旅行の楽しみは、出発日ではなく予約したその日から始まっている——言われてみればそのとおりです。
逆に「いま欲しい・後払い」は、幸せを前借りしている状態です。手に入れる喜びは一瞬で終わり、あとには支払いだけが残ります。分割払いやカードのリボ払いが気持ちの上でも損なのは、ここに理由があります。
「早く手に入れる」ことばかり考えていましたが、待つ期間そのものが商品の一部だという発想は、なかなか新鮮でした。
⑤ 他人に使う|自分のためより、誰かのために
本書によると、自分に使うより、誰かのために使ったほうが幸福度が上がります。しかも金額の大小はあまり関係ないのだそうです。
鍵になるのは「人とのつながりを感じられるかどうか」。だから、顔の見えない大金より、目の前の人へのちょっとした贈り物やおごりのほうが効いたりします。
見返りを期待した瞬間に効果が消えるのも、この授業の面白いところです。気持ちのほうが先にないと成立しません。
読み終わって、3つの問いを持ち歩くことにしました
読書会で発表するにあたって、5つの授業を3つの問いに圧縮してみました。買い物のときに頭のなかで一往復させるだけです。
| 問い | 効きどころ |
|---|---|
| ①その出費、モノ? それとも経験? | 同じ金額でも、残るものが違ってくる |
| ②それ、たまにするから特別なのでは? | 頻度を落とすと、味が濃くなる |
| ③そのお金で、時間や誰かを買えない? | モノ以外の選択肢を思い出せる |
全部を実践しようとすると続かないので、次の出費でひとつだけ試すくらいがちょうどいいと思います。
こんな人に刺さる/刺さらない
刺さると思う人
- 収入は増えたのに、満足感がそれほど変わっていない人
- 買い物のあとに、なんとなく虚しくなることがある人
- 節約はしているが、「使うほう」を考えたことがない人
- データや研究にもとづいた話が好きな人
- 家計の話を、家族と前向きにしたい人
たぶん刺さらない人
- 今月の家計が赤字で、まず削る場所を探している人(この本は削り方の本ではありません)
- 投資でお金を増やす方法を知りたい人
- 研究の紹介が続くのが退屈に感じる人
- すでに「経験にお金を使うほうが幸せ」と実感できている人
気をつけたいところ(正直な感想)
良かったところばかり書いてきたので、引っかかった点も正直に。
- 「使えるお金がある人」向けの本です:時間を買う・他人に使うといった授業は、余裕がないと実行しづらい。ここは読む人を選びます
- 欧米の事例が中心:日本の生活感覚とズレる場面がときどきあります
- やることは地味:劇的に人生が変わる本ではありません。買い物のたびに一往復考える、それだけです
- 「経験を買え」も万能ではない:疲れているときの家事代行のように、モノやサービスのほうが効く場面もあります
いちばん最初の点は、けっこう大事だと思っています。家計が苦しいときに読むと、かえってしんどくなる本かもしれません。まず支出を整えたい方は、家計簿アプリで現状を見える化するほうが先です。
逆に、「稼ぐ・貯める」はある程度できていて、次に『使う』を考えたい人には、これ以上ない一冊だと思います。
似た本との使い分け
当ブログでは「お金の使い方」の本をいくつか紹介してきました。迷ったとき用に整理しておきます。
| 本 | ひとことで |
|---|---|
| 本書 | 研究データから導いた「5つの具体的な使い方」 |
| アート・オブ・スペンディング・マネー | 「正解はない、自分で決めていい」というマインド寄り |
| DIE WITH ZERO | 「いつ使うか」というタイミングの話 |
| サイコロジー・オブ・マネー | お金にまつわる人間の心理と行動 |
いちばん「明日から何をすればいいか」がはっきりしているのが本書です。逆に考え方そのものを揺さぶられたいなら、他の3冊のほうが向いています。
よくある質問
新版と旧版、どちらを買えばいいですか?
これから買うなら新版(2026年4月)です。ページ数が254から278に増えています。旧版(2014年)は中古で安く手に入るので、とにかく安く読みたい方はそちらでも十分です。5つの授業という骨組みは変わりません。
オーディオブックはありますか?
2026年8月時点では、Audibleに音声版はありません。検索しても出てこないので、紙か電子書籍になります。「耳で読みたい」方には残念なところです。
オーディオブックそのものが気になる方は、読書時間を作る5つの方法で0円で試す手順を紹介しています。
節約の本ですか?
違います。削る話は出てきません。「同じ金額を使うなら、どう使えば幸せが大きくなるか」だけを扱った本です。
ただし②の「ご褒美にする」は結果的に支出が減ります。我慢のためではなく、おいしく味わうために減らす——この動機の違いが、続けやすさにつながっている気がします。
読書会で紹介する本としてはどうですか?
とても向いています。5つの授業がきれいに分かれているので、発表が組み立てやすいのと、参加者それぞれの体験談が出てきやすいからです。
わたしがリベシティの読書会で発表したときも、「時間を買う」の話でいちばん盛り上がりました。食洗機を買った人、時短家電を我慢している人、それぞれ言い分があって面白かったです。
難しくないですか?
研究の紹介は多いですが、数式も専門用語も出てきません。「こういう実験をしたら、こういう結果になった」という書き方なので、読み進めるのに知識は不要です。
📚 本をもっと気軽に読みたい方へ
▶ Audible(オーディブル)の無料体験を見てみる![]()
移動中や家事の合間に「耳で読む」。30日間無料、そのあとは月額1,500円です。
▶ Kindle Unlimitedの無料体験を見てみる![]()
対象の電子書籍が読み放題。まずは無料体験から。
▶ Amazonプライムの無料体験を見てみる![]()
30日間無料。Prime Readingで対象の本も読めます。
※無料体験の内容・料金は変わることがあります。申し込み前に各サービスのページでご確認ください。また、紹介した本が対象に含まれているとは限りません。
まとめ:いくら稼ぐかより、どう使うか
本書を読んで一番大きかった気づきは、「お金の使い方には、うまい・へたがある」ということでした。
収入を増やすのは大変です。でも使い方を変えるのは、次の買い物から始められます。しかも余分なお金はかかりません。同じ1万円で、残るものが変わるだけです。
もう一度、5つの授業を。①経験を買う ②ご褒美にする ③時間を買う ④先に支払う ⑤他人に使う。
そして3つの問い。①その出費、モノ? それとも経験? ②それ、たまにするから特別なのでは? ③そのお金で、時間や誰かを買えない?
全部やろうとしなくていいので、次の出費でひとつだけ試してみてください。幸せは、お金の“使い方”から。

コメント