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オーディオブックは理解が落ちる?4,687人分の研究をまとめて分かったこと

読書
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「オーディオブックって、ちゃんと頭に入っているのかな?」

Audibleを使っていると、一度は思いませんか。運転しながら、洗い物をしながら聴いた本の内容が、どれくらい残っているのか。「読んだ」と言っていいのか、なんとなく後ろめたい気もしてくる。私もずっと気になっていました。

そこで、この疑問を扱った研究論文を調べてみました。読むのと聴くのを比べた実験は、じつはかなりの数があります。

結論から言うと、思っていたよりずっとオーディオブックに有利な結果でした。そして「どういう本なら聴いてもいいのか」まで、はっきり見えてきます。

この記事でわかること
  • 4,687人分の研究をまとめた結果、読むか聴くかで理解度に差はなかった
  • ただし「行間を読む」タイプの問題だけは、読むほうが有利だった
  • 脳を撮影すると、聴いたときと読んだときでほぼ同じ場所が働いていた
  • だから「小説は聴く・濃い本は読む」という使い分けには根拠がある
  • 1.5倍速までは影響が小さく、2倍を超えるとはっきり落ちる

結論:全体で見ると、差はありませんでした

いちばん大きな手がかりになるのが、2022年に発表されたメタ分析です。

メタ分析というのは、これまでに行われた実験を全部集めて、まとめて計算し直すという手法です。1つの実験だと「たまたまそうなった」可能性がありますが、たくさん集めれば、そのブレが打ち消されます。研究の世界では、信頼度がとても高いものとして扱われます。

この研究では、46件の実験・のべ4,687人分のデータが集められました。そして出た答えが、これです。

メタ分析の結論
  • 読んだグループと聴いたグループで、理解度に確かな差は認められなかった
  • 差がゼロだったわけではないが、「差がある」と言えるほどの大きさではなかった

「聴く読書は手抜き」というイメージが、私にもどこかにありました。でも少なくとも、全体で見るかぎりそれは正しくなかったということになります。

大人だけを対象にした実験もあります。91人を「オーディオブックだけ」「電子書籍だけ」「両方同時」の3グループに分けて、同じノンフィクションの本を1章分あたえた研究です。

結果は、直後のテストでも、2週間後のテストでも、3グループに差がありませんでした。「2週間後」というのが個人的には嬉しいところで、その場かぎりでなく、ちゃんと残っていたわけです。

ただし「考えながら読む本」では、差が出ました

ここからが面白いところです。

さきほどのメタ分析は、「どんなテストで測ったか」で結果を分けて計算し直しています。すると、きれいに差が現れました。

テストの種類結果
書いてあることをそのまま問う問題
(例:主人公の名前は?)
差なし
行間を読む・推論する問題
(例:なぜ主人公はそうしたのか?)
読むほうが有利
自分のペースで進められる状態で比べたとき読むほうがやや有利

つまり「聴くと理解が落ちる」のではありません。正確には、「立ち止まって考える必要がある本だと、読むほうが有利」ということです。

理由を考えると、当たり前といえば当たり前でした。

なぜ差が生まれるのか
  • 紙の本は、立ち止まれる。分からなければ止まって、前のページに戻れます
  • 音声は、流れていく。考えているあいだにも、話は先へ進んでしまいます
  • だから「読み返す」ことが効く本ほど、聴くのは不利になるわけです

脳の中では、ほぼ同じことが起きていた

もうひとつ、驚いた研究があります。2019年に神経科学の専門誌に載ったものです。

研究チームは、参加者に同じ物語を「聴かせたとき」と「読ませたとき」で、それぞれ脳を撮影しました。そして、意味を処理している脳の場所を地図にして比べたのです。

結果は、2つの地図がほぼ完全に一致していました。

耳から入れても、目から入れても、脳にとっては同じ「意味」として処理されている。入り口が違うだけで、その先は同じ道を通っているわけですね。

「オーディオブックは読書じゃない」と言われることがありますが、少なくとも脳のほうは、区別していなかったようです。これはちょっと痛快でした。

聴くほうが不利だった研究も、正直に紹介します

いいことばかり書くと嘘になるので、逆の結果が出た研究も挙げておきます。

2010年の研究で、大学生に同じ教材をあたえ、片方は音声で聴き、片方は文字で読ませました。すると、聴いたグループのほうがテストの点がかなり低くなりました。

ただ、これには事情があります。これは「勉強」の場面での話だということです。試験に出る内容を覚えるために聴く、という使い方でした。

⚠ 聴く読書が弱くなる場面
  • 覚えなければいけない内容を、音声だけで頭に入れようとするとき
  • 「ながら聴き」になっているとき。手を動かしていると、意識はそちらへ持っていかれます
  • 図や表が出てくる本。音声では、そもそも伝わりません
  • 用語が次々と出てくる専門書。戻れないので、一度つまずくと置いていかれます

だから「小説は聴く・濃い本は読む」でいい

ここまで調べて、いちばん腑に落ちたことがあります。

私は以前、Audibleで実際に聴いた本を紹介した記事で、「小説がいちばん聴くのに向いている」と書きました。実感としてそうだった、というだけの話です。

ところが調べてみると、研究の結論とぴったり重なっていました。

本の種類向き・不向き理由
小説・物語◎ 聴くのに向く時間の流れに沿って進む。戻る必要が少ない
エッセイ・体験談◎ 聴くのに向く話し言葉に近く、耳で追いやすい
講演・対談◎ 聴くのに向くもともと話すために作られた内容
入門書・考え方の本◯ ふつうに聴ける同じ話が繰り返されるので、多少聞き逃しても大丈夫
実務書・専門書△ 読むほうが確実用語が多く、戻って確認したくなる
図表が中心の本× 向かない音声では図が伝わらない

「なんとなくそう感じていたこと」に、ちゃんと理由があった。こういうのを知ると、気持ちよく使えるようになりますね。

じつは「読むのが苦手な人」ほど、耳が効く

もうひとつ、意外だった話があります。2022年に発表された、32件の研究をまとめたレビューです。

ここでは、大人ではなく子どもや、読むことに苦労している人を対象にした研究が多く集められていました。そして、こんな結果が出ています。

聴くほうが有利になる人たち
  • 年齢が低い子どもでは、聴いたほうが理解できたという結果が目立った
  • 読むことにつまずいている人では、音声と文字をいっしょに使うと、文字だけより大きく理解が伸びた
  • その差は、研究によってはかなり大きなものだった

考えてみれば、当たり前かもしれません。文字を読むという作業そのものに力を使ってしまうと、内容を考える余裕がなくなります。音声なら、その手前の負担がまるごと省けるわけです。

「活字が苦手で、本から遠ざかってしまった」という方は、けっこういらっしゃると思います。そういう方にこそ、耳から入るという選択肢があるということですね。私はこれを知って、人にすすめやすくなりました。

1.7倍速で聴いているけど、大丈夫?

ここは私自身がいちばん気になっていたところです。私はふだん1.7〜1.8倍速で聴いています。

再生速度についても、2025年に24件の研究をまとめたメタ分析が出ていました。動画の講義が対象ですが、考え方は同じです。

再生速度理解への影響
〜1.5倍影響は小さい。差が出ないことも多い
1.5〜2倍じわじわ影響が出はじめる
2倍超はっきり落ちる

つまり1.7倍は「ここから気をつけたい」あたりでした。速いほうが偉いわけではない、ということですね。

速度の使い分け
  • 小説は、速くても大丈夫。話の流れで追えるので、1.5〜2倍でも困りません
  • 内容の濃い本は、思い切って落とす。1.2倍くらいまで下げると、ぐっと入ってきます
  • ナレーターによっても変わります。もともと早口の方だと、1.5倍でもかなり速く感じます
  • 「速く終わらせる」ことが目的になっていないか、ときどき点検すると良さそうです

聴いた内容を残すための、4つのコツ

研究から見えてきた「聴く読書の弱点」は、戻れないことながら聴きになることの2つでした。裏を返せば、そこを補えばいいわけです。

弱点を補う4つの方法
  • 30秒戻すボタンを、ためらわず使う。「戻れない」という弱点を、そのまま埋められます
  • 気になったところでブックマークを付ける。あとで戻る目印になります
  • 聴き終わったら、ひとことだけ書く。感想を1行残すだけでも、記憶への残り方がまったく違います
  • 本当に大事な本は、紙でも買う。耳で全体をつかんで、紙で確認する。この組み合わせがいちばん強いです

3つめについては、読んだら忘れない読書の方法にもう少し詳しく書いています。アウトプットの話です。

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まとめ:読まないより、ずっといい

調べてみて分かったことを、もう一度まとめます。

この記事のまとめ
  • 4,687人分をまとめると、読むか聴くかで理解度に確かな差はなかった
  • 差が出るのは「行間を読む」タイプの問題。音声は戻れないから
  • 脳の中では、聴いても読んでもほぼ同じ場所が働いていた
  • 小説は聴く、濃い本は読む。この使い分けには根拠がある
  • 速度は1.5倍までなら影響が小さい。2倍超は落ちる

そして、いちばん大事だと思ったのはここです。

これらの研究はどれも、「机に向かって集中して読む」状態と比べています。でも私たちが現実に比べているのは、そこではありません。

「運転中に聴く」か「何も聴かない」か。その2つです。

通勤の30分、皿を洗う15分。もともと本を読めていなかった時間が、そのまま読書時間に変わる。理解度が多少違うかどうかより、こちらのほうがずっと大きいのではないでしょうか。

読む時間がなかなか取れない方は、忙しい会社員でも読書時間を作る5つの方法もあわせてどうぞ。読書習慣の続け方についても書いています。

Audibleそのものについては、Audibleの魅力と注意点と、2か月使ってみた体験談に正直なところを書きました。あわせて読んでいただけると嬉しいです。

この記事で参考にした研究

数字を書いた以上、出どころも載せておきます。すべて査読を受けた学術論文です。英語ですが、興味のある方はどうぞ。

なお、私は研究者ではありません。論文に書かれている結果を、なるべくそのままの意味で紹介することを心がけましたが、詳しく知りたい方はぜひ原文をあたってみてください。

それではまた🐧

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