KeePassXCの使い方|パスワードをクラウドに預けず自分のPCだけで守る無料ソフト【2026年版】

KeePassXCでパスワードをクラウドに預けず自分のPCで守る パソコン

「パスワード管理サービスから情報が流出した」——数年に一度、こういうニュースが流れます。便利だからクラウド型のサービスを使ってはいるけれど、自分の全パスワードを他社のサーバーに預けている状態が、なんとなく落ち着かない。そう感じたことはありませんか。

その不安に対する、いちばんはっきりした答えが「そもそもどこにも預けない」という選択です。それを実現してくれるのが、今回紹介する無料ソフト「KeePassXC(キーパスXC)」

パスワードは1つの暗号化されたファイルにまとめられ、そのファイルはあなたのパソコンの中だけに置かれます。どこかのサーバーにアップロードされることはありません。

この記事でわかること
  • 始める前に必ず知っておくべき「2つの覚悟」
  • すでに紹介したBitwardenと、どちらを選ぶべきか
  • インストールとデータベース(金庫)の作り方
  • ブラウザ拡張機能で自動入力できるようにする手順
  • 二段階認証コード(TOTP)やパスキーも管理できること
  • いちばん大事な、バックアップの考え方

KeePassXCとは?

KeePassXCは、パスワードを「KDBX」という暗号化されたファイル1つにまとめて保管する無料ソフトです。もともとWindows向けにあった老舗ソフト「KeePass」を、有志がWindows・Mac・Linuxのどれでも使えるように作り直したものです。

いちばんの特徴は、アカウント登録もサーバーへの接続も一切ないこと。インストールしてファイルを1つ作れば、それで完結します。

項目内容
ソフト名KeePassXC(キーパスXC)
価格完全無料(広告なし・有料版なし・寄付で運営)
対応OSWindows 10/11(64bit)、macOS、Linux
ライセンスGPL-2.0/GPL-3.0(オープンソース)
暗号化方式AES-256(標準)/Twofish/ChaCha20 から選択可能
最新版2.7.12(2026年8月時点)
インストーラー「KeePassXC-2.7.12-Win64.msi」約34MB
GitHub約28,500のスター(2026年8月時点)
保存先自分のパソコンの中のKDBXファイル1つだけ

【最重要】始める前に知っておくべき2つの覚悟

ここを理解せずに始めると、取り返しがつかないことになります。便利さの話より先に、必ず読んでください。

覚悟① マスターパスワードを忘れたら、二度と開けません
  • KeePassXCには「パスワードをお忘れですか?」というリンクがありません。問い合わせ窓口もありません。運営会社があなたのファイルを預かっていない以上、誰にも助けられないのです。
  • これは欠陥ではなく、「誰にも開けられない」という安全性の裏返しです。ただし現実問題として、マスターパスワードを忘れた時点で中身は永久に失われます。紙に書いて金庫や引き出しにしまっておくくらいの備えを、必ずしてください。
覚悟② バックアップは100%自分の責任です
  • クラウド型のサービスなら、パソコンが壊れてもサーバーにデータが残っています。KeePassXCにはそれがありません。KDBXファイルが入ったパソコンが故障すれば、パスワードはすべて消えます。
  • 後半で具体的なバックアップ方法を説明しますが、「自分で守る」とは「自分でバックアップする」という意味だと、先に理解しておいてください。

Bitwardenとどちらを選ぶ?

当ブログでは以前Bitwarden(ビットワーデン)の使い方も紹介しました。どちらも優秀な無料ソフトですが、思想がまったく違います。どちらが上ということはなく、向き不向きの問題です。

KeePassXCBitwarden
保存場所自分のパソコンの中だけBitwardenのサーバー(暗号化済み)
スマホとの同期自分で仕組みを用意する自動でできる
バックアップ自分の責任サービス側にも残る
アカウント登録不要必要
サービス終了リスクなし(手元にファイルがある)あり(ただし書き出しは可能)
手軽さひと手間かかるかなり楽
迷ったときの選び方
  • スマホでもパソコンでも、とにかく楽に使いたい → Bitwarden
  • パソコンが中心。データを他社に預けたくない → KeePassXC
  • パソコンにあまり詳しくない・バックアップを自分で管理する自信がない → Bitwardenのほうが安全です
  • 正直に言うと、多くの方にとってはBitwardenのほうが向いています。KeePassXCは「手間を引き受ける代わりに、完全な主導権を握る」ためのソフトです。

インストール手順

  1. 公式サイト(keepassxc.org)のダウンロードページを開きます。
  2. Windows向けの「KeePassXC-2.7.12-Win64.msi」(約34MB)をダウンロードします。
  3. ダウンロードしたファイルをダブルクリックし、画面の指示どおりに進めます。
  4. 起動すると、初回は英語表示のことがあります。「Tools」→「Settings」→「General」→「Language」で「日本語」を選び、再起動すれば日本語になります。
つまずきポイント:起動しない・エラーが出る場合
  • KeePassXCは動作に「Microsoft Visual C++ 再頒布可能パッケージ」という部品を必要とします。多くのパソコンには他のソフトの導入時にすでに入っていますが、まっさらな環境だと不足していることがあります。
  • インストール後に起動しない場合は、Microsoft公式サイトから「Visual C++ 再頒布可能パッケージ(x64)」を入れてください。無料で、入れても他に影響はありません。
  • なお32bit版のWindowsはバージョン2.6.6でサポートが終了しています。Windows 7/8/8.1をお使いの場合は、ダウンロードページにある「LegacyWindows」と付いたファイルを選んでください。
安心ポイント:発行元の表示について
  • インストーラーには正式なデジタル署名が付いているため、警告画面は出ません。ただし発行元の表示は「DroidMonkey Apps, LLC」となっており、「KeePassXC」ではありません。これはKeePassXCの主要開発者が運営する会社の名義なので、公式サイトから入手したものであれば問題ありません(実際にダウンロードして署名を確認済みです)。

最初にやること:パスワードの「金庫」を作る

KeePassXCでは、パスワードをしまう入れ物のことをデータベースと呼びます。実体はKDBXという拡張子のファイル1つです。

  1. 起動画面で「新しいデータベースを作成する」をクリックします。
  2. データベースの名前を決めます(「マイパスワード」など、分かりやすい名前でOK)。
  3. 暗号化の設定画面が出ますが、初期設定のままで十分に安全です。そのまま進めてください。
  4. マスターパスワードを決めます。ここが最大の山場です(下の解説を参照)。
  5. ファイルの保存場所を選びます。「ドキュメント」フォルダなど、自分が場所を覚えていられるところにしましょう。
マスターパスワードの決め方
  • これから覚えるパスワードはこの1つだけになります。だからこそ「長くて、でも自分は思い出せるもの」にしてください。
  • おすすめは「無関係な単語を4つつなげる」方法。例:「みかん-階段-電池-くじら」のように、意味のつながらない言葉を並べます
  • 記号や数字を無理に混ぜるより、長さのほうが効きます
  • 誕生日、家族の名前、住所など調べれば分かるものは避けてください
  • 決めたら紙に書いて、パソコンとは別の場所に保管します

パスワードを登録する・ブラウザで自動入力する

金庫ができたら、あとは中身を入れていくだけです。画面上部の「新規エントリー」から、サービス名・ユーザー名・パスワード・URLを登録します。

パスワード欄の横にあるサイコロのアイコンを押すと、強力なパスワードを自動で作ってくれます。自分で考える必要はありません——というより、考えないほうが安全です。

ブラウザ拡張機能を入れると一気に快適になる

ここを設定しないと「毎回KeePassXCを開いてコピー&ペースト」という面倒な使い方になります。拡張機能を入れれば、ログイン画面で自動的にIDとパスワードが入ります。

  1. お使いのブラウザの拡張機能ストアで「KeePassXC-Browser」を検索して追加します(Chrome・Firefox・Edge・Braveなどに対応しています)。
  2. KeePassXC本体の「設定」→「ブラウザ統合」を開き、有効にします。使うブラウザにもチェックを入れます。
  3. ブラウザ側の拡張機能アイコンから「接続」を押すと、本体側に確認画面が出ます。分かりやすい名前を付けて許可します。
  4. 以降、登録したサイトを開くと自動で入力できるようになります。

注意点として、自動入力はKeePassXC本体が起動していて、かつ金庫が開いている(ロック解除されている)ときだけ動きます。本体を閉じていると拡張機能は反応しません。

二段階認証コード(TOTP)とパスキーにも対応

KeePassXCは、パスワードを入れておくだけの道具ではありません。

機能できること
TOTP(二段階認証)スマホの認証アプリが出す「30秒で変わる6桁の数字」を、パソコン側で表示できます
パスキーパスワードを使わない新しいログイン方式にも対応(バージョン2.7.7から)
YubiKeyUSBの物理キーを挿さないと金庫が開かない、という設定にできます
他ソフトからの取り込みBitwarden・1Password・CSVファイルなどから引っ越しできます
TOTPを1つの金庫に入れることの是非
  • 便利な機能ですが、「パスワード」と「二段階認証コード」を同じ金庫に入れると、二段階認証の意味が薄れるという考え方もあります。金庫が破られたら両方とも取られてしまうためです。
  • 銀行や証券など本当に重要なサービスの二段階認証は、スマホの認証アプリに分けておくのが無難です。日常的なサービスはKeePassXCにまとめる、という使い分けをおすすめします。

【必須】バックアップの考え方

冒頭の「覚悟②」の答え合わせです。KDBXファイルを失う=全パスワードを失うので、ここだけは手を抜かないでください。

ありがたいことに、KDBXファイルはそれ自体が強力に暗号化されています。だからクラウドに置いても中身は読めません。この性質を利用します。

  • 方法1:クラウドに置く OneDriveやDropboxのフォルダにKDBXファイルを保存します。パソコンが壊れても復旧でき、しかも複数のパソコンで同じ金庫を使えるようになります
  • 方法2:外付けドライブにコピー 定期的にUSBメモリや外付けHDDへコピーします。FreeFileSyncの使い方で自動化しておくと確実です
  • 方法3:両方やる いちばん安心なのはこれです。ファイルサイズは小さいので、負担にはなりません

「クラウドに置いたら意味がないのでは?」と思われるかもしれません。しかしクラウド型サービスとの決定的な違いは、鍵(マスターパスワード)を相手に一切渡していないことです。あちらは金庫の中身も鍵の管理も預けている状態、こちらは鍵のかかった箱だけを倉庫に置いている状態。まったく意味が違います。

スマホでも使いたい場合は

KeePassXC自体にはスマホ版がありません。ただしKDBXという形式は共通の規格なので、対応した別のアプリで同じファイルを開けます。

Androidなら「KeePassDX」、iPhoneなら「KeePassium」や「Strongbox」といった無料アプリが定番です。KDBXファイルをクラウドに置いておけば、パソコンとスマホで同じ金庫を共有できます。

ただしアプリが別々になるぶん、Bitwardenのような「入れるだけ」の手軽さはありません。スマホ利用が中心の方は、素直にBitwardenを選んだほうが幸せかもしれません。

よくある質問

Q. 本当に無料ですか?あとから請求されませんか?

A. 完全無料です。有料版もサブスクリプションもなく、広告も表示されません。オープンソースとして公開され、寄付によって運営されています。

Q. 開発が終わってしまったらどうなりますか?

A. 手元にKDBXファイルがある限り、困りません。KDBXは多くのソフトが対応している共通形式なので、別のソフトでそのまま開けます。「サービスが終了したらデータごと消える」という心配がないのが、ローカル管理の強みです。

Q. 今使っているパスワード管理サービスから移行できますか?

A. できます。Bitwardenや1Passwordの書き出しファイル、一般的なCSVファイルからの取り込みに対応しています。取り込みが終わったら、書き出したファイルは必ず削除してください。あれは暗号化されていない、パスワードの丸見えファイルです。

Q. 家族と共有できますか?

A. 同じKDBXファイルを共有フォルダに置けば、仕組みのうえでは可能です。ただし2人が同時に編集すると内容が壊れることがあるため、あまりおすすめしません。家族での共有が前提なら、その機能を正式に持つBitwardenのほうが向いています。

まとめ

KeePassXCは、「パスワードを他人に預けたくない」という考えを、そのまま形にしたソフトです。アカウント登録もサーバー接続もなく、暗号化されたファイル1つですべてが完結します。

その代わり、マスターパスワードの管理とバックアップは、すべて自分の仕事になります。この責任を引き受けられる方にとっては、これ以上ないほど信頼できる相棒になってくれます。逆にそこが不安なら、無理をせずBitwardenを選ぶのが賢明です。

今日やること
  • 公式サイトからKeePassXCを入れる(起動しなければVisual C++再頒布可能パッケージを追加)
  • マスターパスワードを決めて、紙に書いて別の場所へ保管する
  • 試しに1つだけパスワードを登録してみる(サイコロボタンで自動生成)
  • ブラウザ拡張機能「KeePassXC-Browser」を入れて自動入力を試す
  • KDBXファイルをOneDriveなどのクラウドフォルダに移して、バックアップ経路を作る

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