マイナンバーカードのコピー、保険証の写真、確定申告の書類、家族との思い出の写真――パソコンやUSBメモリの中には、人には見られたくない大切なファイルがたくさん眠っていませんか?「USBメモリをどこかで落としたらどうしよう」「クラウドストレージのアカウントが乗っ取られたら」。そんな不安を一度でも感じたことがある方は、少なくないはずです。
「なくしたら困る」ファイルほど、実は何の対策もされないまま保存されていることが多いのです。今回は、そんな不安をワンクリックで解消できる、無料の暗号化ソフト「Picocrypt(ピコクリプト)」の使い方を、パソコン初心者の方にもわかるように解説します。
パスワードをかけただけでは、実は守れていない
「ZIPファイルにパスワードを設定すれば安心」と思っていませんか? 実はWindows標準の圧縮機能や、古い形式のZIPパスワードは、専用の解析ソフトを使うとあっという間に突破されてしまうことがあります。フォルダに鍵マークをつけるだけの簡易ロックも同様で、パソコンに詳しい人であれば中身を覗き見ることは難しくありません。
本当に大切なファイルを守るには、政府機関レベルとも言われる暗号化方式を、専門知識がなくても使えるレベルまで簡単にしてくれるソフトが必要です。そこで登場するのが、今回紹介する「Picocrypt」です。ファイルをドラッグ&ドロップしてパスワードを決めるだけで、強力な暗号化がその場で完了します。
Picocryptとは?小さくてシンプル、でも強力な暗号化ソフト
Picocryptは、「とても小さく、とてもシンプルで、しかしとても安全」を掲げて開発された、無料・オープンソースのファイル暗号化ソフトです。難しい設定は一切不要で、ファイルをウィンドウにドラッグしてパスワードを入力するだけで、暗号化と復号化ができます。
なお、開発は2025年9月に一区切りとなり、現在は新機能の追加やアップデートは行われていません。ただし開発者自身が「今も完全に機能し、安定していて安全」と明言しており、暗号化ソフトとしての中身(XChaCha20やArgon2idといった暗号技術)は世界中の専門家による監査も受けているため、個人が大切なファイルを守る用途であれば、今からダウンロードしても問題なく使えます。
ちなみに、開発終了後も有志によって更新が続けられている「Picocrypt NG」という派生版も存在します。ただし本家の開発者は関与しておらず、初心者が最初に触るソフトとしては、実績のある本家Picocryptのほうが情報も安定していて安心です。まずは本家版から試してみましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ソフト名 | Picocrypt(ピコクリプト) |
| 対応OS | Windows/macOS/Linux |
| 価格 | 完全無料(オープンソース) |
| 動作形式 | インストール不要のポータブル版あり(インストーラー版も選択可) |
| 暗号化方式 | XChaCha20+Argon2id(専門家による監査済みの高強度な方式) |
| 日本語表示 | 非対応(画面は英語だが操作は非常にシンプル) |
| 開発状況 | 2025年9月に開発終了(安定版として利用継続は可能) |
主な機能
- ドラッグ&ドロップ暗号化:ファイルやフォルダを画面に置くだけで準備完了
- パスワード生成機能:安全なパスワードをワンクリックで自動生成
- キーファイル対応:パスワードに加えて「鍵になるファイル」を組み合わせ、さらに安全性を高められる(パスワードだけでなく、特定のUSBメモリに入れた任意のファイルがないと復号できないようにする、といった使い方も可能)
- 破損時の自動修復(Reed-Solomon誤り訂正):USBメモリの一部が壊れても、暗号化ファイルを復元できる可能性が高まる
- 圧縮オプション:暗号化と同時にファイルサイズを圧縮
他の方法と比べてどう違う?
ファイルを守る方法は他にもありますが、それぞれ一長一短があります。「難しすぎず、それでいて安全」という絶妙なバランスがPicocryptの強みです。
| 方法 | 手軽さ | 安全性 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Picocrypt | ◎(ドラッグするだけ) | ◎ | 単体ファイル・フォルダの暗号化に最適 |
| 7-Zip等のZIPパスワード | ○ | △ | 形式によっては解析ソフトで突破される場合がある |
| BitLocker(Windows標準) | ○ | ◎ | ドライブ全体の暗号化向け。Pro/Enterprise版限定の機能 |
| VeraCrypt | △(設定項目が多い) | ◎ | 仮想ドライブごと暗号化する上級者向けソフト |
インストール方法
Picocryptは公式サイトのGitHub(配布ページ)から入手します。インストール作業すら不要な「ポータブル版」があるのが大きな魅力です。
- Picocryptの公式配布ページ(GitHub Releases)にアクセスする
- Windows用の「Picocrypt.exe」(ポータブル版)をダウンロードする。インストールして使いたい場合は「Installer.exe」を選んでもよい
- ダウンロードした場所に保存されたexeファイルをダブルクリックして起動する(ポータブル版はインストール不要でそのまま使える)
- 初回起動時にセキュリティの警告が表示された場合は、発行元がGitHub上で公開されているオープンソースソフトであることを確認したうえで実行を許可する
ファイルを暗号化する手順
- Picocryptを起動し、暗号化したいファイルやフォルダを画面中央のエリアにドラッグ&ドロップする
- 「Password」欄に、自分だけがわかる強力なパスワードを入力する(右側のサイコロのようなアイコンから自動生成も可能)
- 同じパスワードを確認欄にもう一度入力する
- 必要であれば「Compress files」(圧縮)や「Reed-Solomon」(破損対策)などのオプションにチェックを入れる
- 画面下の「Encrypt」ボタンをクリックする
- 元のファイルと同じ場所に、拡張子が「.pcv」となった暗号化ファイルが作成される
暗号化したファイルを元に戻す(復号化)手順
- Picocryptを起動し、「.pcv」形式の暗号化ファイルをドラッグ&ドロップする
- 暗号化したときと同じパスワードを入力する
- 「Decrypt」ボタンをクリックする
- 元のファイルが同じ場所に復元される
パスワードを忘れてしまうと、開発者であっても中身を復元することはできません。パスワードは付箋にメモするのではなく、パスワード管理ソフト「Bitwarden」などにきちんと保管しておくことをおすすめします。
今日からできること
「いつか暗号化しよう」ではなく、「今日、1つだけ暗号化する」が大切です。まずは次のようなファイルから試してみましょう。
- マイナンバーカード・免許証・保険証をスキャンした画像
- 確定申告や家計に関する書類のPDF
- クラウドストレージにアップロードする前の、家族の写真フォルダ
- 誰かに共有するUSBメモリの中身
クラウドにアップロードする前にPicocryptで一段階暗号化しておけば、万が一アカウントの情報が漏れてしまっても、中身まで読み取られるリスクを大きく減らすことができます。
まとめ
Picocryptは、開発こそ一区切りを迎えたものの、「ドラッグ&ドロップとパスワードだけ」というシンプルさと、専門家に監査された暗号化方式を両立させた、今でも十分実用的な無料ソフトです。難しい設定に悩む必要はなく、大切なファイルを守る第一歩として気軽に取り入れられます。
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