「あっ」と思ったときには、もう消えている。しかもゴミ箱まで空にしてしまった——。大事な写真や、締め切り前の書類。血の気が引く瞬間です。
でも、まだあきらめないでください。削除したファイルは、しばらくの間パソコンの中に残っています。正しい手順を踏めば、無料のソフトで取り戻せる可能性が十分にあります。
なぜ削除したファイルが戻せるのか
パソコンでファイルを削除しても、実はデータそのものは消えていません。消えているのは「この場所に、このファイルがあります」という目次の情報だけです。
図書館にたとえると分かりやすいと思います。本棚から本を抜いたのではなく、貸出カードから記録を消しただけ。本自体は棚に残っていますが、目録に載っていないので誰も見つけられない——そんな状態です。
そしてパソコンは、その場所を「空いている棚」として扱い始めます。次に新しいデータを保存するとき、そこに上書きしてしまうのです。復元ソフトの仕事は、上書きされる前に棚を隅々まで調べて、目録から消えた本を探し出すこと。だからこそ、時間との勝負になります。
Recuva(リクーバ)とは?
Recuvaは、削除したファイルを探し出して復元する定番の無料ソフトです。パソコンのお掃除ソフト「CCleaner」と同じ開発元が作っており、無料版でも機能に大きな制限がないのが特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ソフト名 | Recuva(リクーバ) |
| 価格 | 無料版あり(Professional版は2,380円) |
| 開発元 | Gen Digital社(CCleaner・Nortonなどを手がける企業) |
| 対応OS | 公式表記はWindows 10まで(Windows 11でも動作報告多数) |
| 日本語 | 対応(インストール時に選択) |
| 最新版 | v1.55.133(2026年6月22日更新) |
| インストーラー | 「rcsetup155.exe」約24.5MB |
| 対応機器 | 内蔵HDD・SSD、外付けHDD、USBメモリ、SDカードなど |
有料版との違いは「仮想ドライブへの対応」「自動更新」「メールサポート」の3点です。肝心の復元機能そのものは無料版でも使えますので、まずは無料版を試して問題ありません。
【最重要】復元を始める前に守る3つのルール
ここを守るかどうかで結果が変わります。焦って手順を飛ばすと、自分の手で復元できない状態を作ってしまいます。
ルール1:消したファイルがあったドライブを使わない
先ほど説明したとおり、新しい書き込みはすべて上書きの危険につながります。とくにCドライブ(パソコン本体)で消してしまった場合は、そのパソコンを触ること自体がリスクです。写真の閲覧、動画の再生、ソフトのインストール——どれも書き込みが発生します。
ルール2:復元ソフトを「同じドライブ」に入れない
ここが多くの人がやってしまう失敗です。Cドライブのファイルを復元したいのに、Recuvaを普通にCドライブへインストールしてしまう——これでは、復元したいファイルの上に復元ソフトを重ねて置いているようなものです。
ルール3:復元したファイルの保存先も別のドライブにする
復元作業の最後に「どこに保存しますか?」と聞かれます。ここで元と同じドライブを選んではいけません。まだ復元していない他のファイルを、たった今復元したファイルで上書きしてしまう可能性があるからです。
Cドライブから復元するならDドライブへ。ドライブが1つしかないパソコンなら、USBメモリや外付けHDDを保存先に指定してください。
インストール手順(同梱ソフトに注意)
- 公式サイト(ccleaner.com)からRecuvaの無料版をダウンロードします。ポータブル版を使う場合は、別のパソコンでダウンロードしてUSBメモリに入れてください。
- インストーラーを起動すると、右上に言語を選ぶ欄があります。ここで「Japanese」を選びます。
- ここが要注意です。画面の下のほうに「CCleaner」も一緒に入れるかどうかの選択が出ることがあります。必要なければ「No thanks, I don’t need CCleaner」を選んでください。
- 「インストール」を押して完了です。
なお、インストーラーには開発元Gen Digital社の正式なデジタル署名が付いているため、「Windows によって PC が保護されました」という警告は表示されません(実際にダウンロードして確認済みです)。
実際に復元する手順
Recuvaを起動すると、質問に答えていくだけのウィザード形式で進みます。難しい操作はありません。
- ファイルの種類を選ぶ:「画像」「文書」「音楽」など。分からなければ「すべてのファイル」で構いません。
- あった場所を選ぶ:「ゴミ箱の中」「メディアカード」など。心当たりのある場所を選びます。分からなければ「はっきりしない」でOKです。
- スキャンを開始:「開始」を押すと検索が始まります。数分〜数十分かかることがあります。
- 結果を確認する:見つかったファイルが一覧で出ます。先頭に緑・黄・赤の印が付いているので、これを見ます(次の表を参照)。
- 復元する:戻したいファイルにチェックを入れ、「復元」を押します。
- 保存先を選ぶ:必ず別のドライブ(USBメモリなど)を指定してください。
| 印の色 | 意味 | 期待できること |
|---|---|---|
| 🟢 緑 | 状態が良い | そのまま開ける可能性が高い |
| 🟡 黄 | 一部が上書きされている | 復元できても中身が壊れていることがある |
| 🔴 赤 | 大部分が上書き済み | 復元しても、ほぼ開けない |
緑のものから優先して復元してください。赤でも試す価値はゼロではありませんが、期待はしないほうがよいでしょう。
見つからないときは「ディープスキャン」
通常のスキャンで目的のファイルが出てこなかった場合、「ディープスキャン」という念入りな検索を試せます。スキャン結果の画面で「ディープスキャンを有効にする」にチェックを入れて、もう一度実行してください。
ただし時間は大幅に伸びます。ドライブの容量にもよりますが、数時間かかることも珍しくありません。時間に余裕があるときに実行してください。
また、ディープスキャンで見つかったファイルは元のファイル名が失われ、「[00123].jpg」のような番号になっていることがよくあります。これは目次の情報がすでに消えていて、データの中身だけを拾い上げているためです。名前は分からなくても、中身が無事なら開けます。
【正直な話】復元できないケースもあります
期待を持たせすぎるのは誠実ではないので、戻ってこない場合についてもはっきり書いておきます。
| 状況 | 見込み | 理由 |
|---|---|---|
| SSDから削除した | かなり厳しい | SSDには「TRIM」という機能があり、削除した領域を自動で消去してしまうため |
| 削除後もパソコンを使い続けた | 厳しい | 上書きされている可能性が高い |
| ドライブをフォーマットした | 状況による | クイックフォーマットなら望みあり。完全フォーマットは絶望的 |
| 異音がする・認識されない | ソフトでは不可 | 物理的な故障。通電し続けると悪化します |
ドライブの健康状態が気になる方は、CrystalDiskInfoでSSD・HDDの寿命を診断する方法で、事前に確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. スマホで消した写真も復元できますか?
A. スマホ本体の中の写真は復元できません。Recuvaはパソコンがドライブとして認識できる機器だけが対象です。ただしデジカメやスマホから抜いたSDカードを、カードリーダーでパソコンにつなげば対象になります。
Q. 復元したファイルが開けません
A. 一部が上書きされていて、データが欠けている可能性が高いです。一覧の印が黄色や赤だったファイルは、この状態になりがちです。残念ながら、欠けた部分を復元する方法はありません。
Q. 無料版で本当に十分ですか?
A. 個人の使い方であれば十分です。有料版で増えるのは仮想ドライブ対応・自動更新・サポートで、復元できるファイルの数や種類に制限はありません。まず無料版で試して、見つかるかどうかを確認するのが賢い進め方です。
Q. 二度と同じ思いをしないためには?
A. 復元は「最後の手段」であって、対策ではありません。いちばん確実なのは、自動でバックアップを取っておくことです。FreeFileSyncの使い方を使えば、大事なフォルダを外付けHDDへ定期的にコピーする仕組みを無料で作れます。今回ヒヤリとした方こそ、この機会にぜひ。
まとめ
削除したファイルは、すぐには消えていません。「気づいてから、そのパソコンを使わないこと」——これさえ守れば、無料のRecuvaで取り戻せる可能性は十分にあります。
逆に、慌てて何かをインストールしたり、同じドライブに復元したりすると、自分の手で望みを断ってしまいます。焦る気持ちは分かりますが、まずは深呼吸して、手順どおりに進めてください。
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