Inkscape の隠れた魅力、それはカリグラフィ機能です。
ペイントなどのフリーハンド・手書き機能では難しい繊細な線や曲線も、Inkscape なら素早く美しく描けてしまいます。
ベクター形式だから、拡大しても美しさそのまま。
Inkscape に慣れている人なら、直感的な操作で本格的なカリグラフィデザインを楽しめます。
今回は、このパワフルな機能の使い方と魅力をご紹介します。
はじめに

みなさん、こんにちは! Nくまです。
今回は、Inkscape の説明第5弾!ということで、手書き風に描けるカリグラフィー(calligraphy)について書いてみます。
ドローソフト Inkscape について
かんたんにドローソフト Inkscape についての特徴を書いてみます。
この記事を書いたときの環境を書いておきます。
- Windows10
- Dell ノートパソコン
- Inkscape 1.4
- ペンタブレットは無くマウスで描画

Inkscape で 取り扱いしているフォーマットの一例です
基本はSVGファイルで編集を続けて、画像として出力する場合はPNGファイルやPDFファイルにすれば良さそうです。
カリグラフィツールとは
Inkscapeのカリグラフィツールを使うと、筆やペンで書いたような特徴的な線を描くことができます。
左のメニューバーから、カリグラフィを選択してください。

プリセットされているものがありますので、その一例を示します。
(6パターンあるようです)
ためしに、私がマウスで書いてみました。

フィルに灰色とストロークに黒色を付けている状態なんですが、「つけペン」あるいは「マーカー」が、無難な感じがしますね。
これだけでも十分な機能ではあります。
これをベーツに使いつつ、必要に応じて設定パラメータを変更して使用することが簡単です。
カリグラフィツールの特徴
- 幅のある線: 通常の線ツールとは異なり、カリグラフィツールは指定した幅を持つパスを描くことができます
- 筆致の再現: ドラッグに沿って、つけペンやブラシで描いたような自然な線を作成できます。 華麗な表現: このツールを使いこなすことで、華麗な筆致を表現することが可能です
一方で、正確な線が欲しい場合はベジエツールがオススメです。
カリグラフィー使用方法

カリグラフィツールを使用するには、Inkscapeのツールボックスからカリグラフィツールのアイコンを選択します。
その後、キャンバス上でドラッグすることで、つけペンやブラシで描いたような線を作成できます。
このツールは手書き風の文字やデザインを作成する際に特に有用です。
線の太さや形状を調整することで、様々な筆記具や書体の特徴を再現することができます。
Inkscapeのカリグラフィツールは、ベクターグラフィックスの特性を活かしながら、手書きの温かみや個性を表現できる強力な機能の一つと言えるでしょう。
設定項目
Inkscapeのカリグラフィツールには、以下の主要なパラメータがあります:
- 幅(width):1〜100pxの範囲で線の太さを設定します。px以外の単位も設定できます。
- 幅変化(thinning):-100〜100の範囲で、マウスの移動速度に応じた線幅の変化を指定します。0だと速度変化なし。0以上だと早く動くときに細くなります。マイナスだと太くなります。
- 質量(Mass):0〜100の範囲でペンのドラッグへの反応の遅れを設定します。慣性のイメージです。
- 角度(angle):-90°〜90°の範囲でペンの角度を指定します。
- 固定度(fixation):0〜100の範囲で設定。0でペン運びの方向に合わせて傾き、100で角度を固定します。
- キャップ(cap):0.0〜5.0の範囲で線の両端の盛り上がりを指定します。
- 震え(tremor):0〜100の範囲で横方向の震えを設定します。
- うねり(wiggle):0〜100の範囲でペンの波状やうねり幅を指定します。
実際の数値は個人の好みや描きたい効果によって異なるため、これらのパラメータを様々に組み合わせて実験してみることをお勧めします。
設定一例
設定の一覧を表にしてみました。
あくまで参考にお願いします。
名前 | 幅[px] | 幅変化 | 質量 | 角度 | 固定度 | キャップ | 震え | うねり |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
つけペン | 50 | 10 | 2 | 30 | 90 | 0 | 0 | 0 |
マーカー | 50 | 0 | 2 | 90 | 0 | 1.00 | 0 | 0 |
ブラシ | 50 | -40 | 2 | 45 | 16 | 0.10 | 0 | 25 |
うねり | 50 | -30 | 0 | 30 | 16 | 0.10 | 18 | 50 |
Splotch(斑点) | 100 | 30 | 0 | 30 | 0 | 1.00 | 10 | 0 |
トレーシング | 50 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ドリッピング? | 100 | 100 | 2 | 30 | 0 | 0 | 70 | 80 |
神経細胞? | 100 | 100 | 2 | 30 | 90 | 0 | 0 | 0 |
習字風 | 50 | 40 | 10 | 30 | 90 | 0.20 | 5 | 10 |
パラメータは、随時調整してお使いください。
メモ:
つけペンの設定で、固定度を100にすると Times のフォントに近くになります。

ドリッピング
Inkscape のカリグラフィツール でドリッピング(滴り落ちる)効果を出すには、以下のパラメータ設定が効果的です(perplexityに聞いてみました):
- 幅:50-100の範囲で設定し、太めの線を作ります。
- 幅変化:100に近い値を設定し、動きが遅いほど線が太くなるようにします。
- 固定度:0-10の低い値に設定し、ペンの角度が自由に変化するようにします。
- 震え:50-80の高めの値に設定し、不規則な線を作ります。
- うねり:70-100の高い値に設定し、大きな曲がりを作ります。
- 質量:80-100の高い値に設定し、慣性のある動きを再現します。
これらのパラメータを組み合わせて調整することで、ドリッピングのような不規則で流動的な線を描くことができます。実際に描く際は、マウスやペンタブレットを使って、上から下へ向かってゆっくりと不規則な動きで描くと、より自然なドリッピング効果が得られます。
私の方で試してみました。
マウスの移動速度を変えてみることで線幅の変化を出すことができます。

最近読んだ本にジャクソン・ポロックのことが書かれていたので、気になりました。
ジャクソン・ポロックの画風とは、また違うものな気がしますが、アートっぽくなって面白いですね。
脳神経ニューロ?
幅を100px, 幅変化を100にしただけでも、脳神経のニューロみたいな?ものを描くことが出来ます。
カーソルのスピードに緩急をつけることで細くなったり太くなったりして楽しいですよ。

習字風
習字風な感じでやってみました。パラメータは上記の通りです。
Inkscape である程度、描画できることが面白いですね。

まとめ

今回は、カリグラフィーについて記事を作ってみました。
独自の文字を作ったり、アートの活用に有効な方法です。
また、ペンタブレットが無くてもマウスで作れてしまうことも便利ですよ。
ご興味があれば試してみることをおすすめします。
参考サイト
Inkscapeのカリグラフィーについて参考にしたサイトを記載しておきます。
大変ためになります。ありがとうございます。



関連記事
関連記事としてInkscapeで線を書く方法について書いてみた記事もあります。
ベジェ曲線を書く方法についても記載いたしました。
あとがき
本ブログの Inkscape の記事が予想以上に見ていただいているようなので、関連記事を作ってみました。
Windows標準のペイントのようなソフトでもいいんですが、面白い線、独自の文字を作れるのが魅力的なのでご紹介させていただきました。
何かしらの参考になれば幸いです。


読んでいただきまして、ありがとうございました!
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